家を捨てよ、街へ出よう

子育てリストラ宣言:最終回  文/今一生(フリーライター)

 親といえども、ふだん一番接しているはずの子どものことをほとんど知らない。前回の「親テスト」を試みられた方は、そんなふうにお気づきになったのではと思います。そこで、親として失格などと考える必要はありません。
 むしろ、自分の無知とそれゆえに芽生えた子どもへの好奇心を、子育ての新たな出発点にすればいいのです。

 でも、なぜわが子のことなのに、知らないことが多いのでしょうか? 子どもに対して強い関心が無いからです。それは、あなた自身が自分に対しての関心が薄いからです。そこそこ上手に子育てをしている方は、子どもと自分に同じくらい高い関心を寄せています。つまり、まず自分を十分に愛し、愛されているという実感をふまえて、わが子を愛しているのです。
 逆に、子育てに失敗しがちな親は、わが子と自分への愛情のバランスがよくありません。子どものことをすべておいて優先したり、子どもはそっちのけで自分の事情を優先することにかまけてしまいます。これには、親自身がそれまでの人生で愛情に恵まれず、少なくとも精神的に一人で生きていけるという自信(=プライド。自尊心)が育まれてこなかったからです。

 そんな親子に必要な「愛」とは、どうすれば手に入るのでしょうか? まず、親であるあなた個人が、ハッキリとした生き甲斐(生きている意味、手ごたえ、快楽など)を持ち、その頑張りを自分もしくは他者に十分に認めてもらうこと
 (※ここでいう「生き甲斐」は、誰かと一緒に達成するものではなく、あくまでもあなた1人で行うプライベートで具体的な目標を意味します)。

 そして、自己決定の結果としての差異(納得できないこと)を尊重し、決して自分の意見を強要せず、お互いが安心して自分の気持ちを素直にうち明けられる対象になることをめざして、信頼を少しずつ築き上げていくこと。
 仕上げは、相手(子どもでも配偶者でもかまいません)が自発的に助けが欲しがった時に、それが確かに相手の力量オーバーであり、自分の手に負える範囲の手助けならば、すぐさま対応するというつき合い方を、互いの約束として定着させていくことです。

 日本は、1965年から結婚適齢期の20〜30代での未婚率、離婚率が右上がり一直線で、男女の恋愛(結婚)関係は昔に比べて全体的に冷めつつあります。これは、女性の雇用機会の拡がりによる自立のチャンスの拡大、豊かさによる仕事以外の生き甲斐への目覚めのほかに、家庭や会社、学校などの構造的な変質からストレスをためこみ、自分を上手に愛せなくなった男女が恋愛に逃避しては上すべりする感覚に疲れてしまった結果であるとも推測できます。
 いずれにしろ、男女間の関係が薄くなるにつれ、親=子の結びつきも弱まりつつあり、実際「一人で生きていく自信」を無くした自殺者たちは92年から増加傾向にあります。そんな今日、僕はこう提案したいです。子どもも奥さんも、家を捨て、街へ出よう、と。実際、『完全家出マニュアル』(仮題/メディアワークス刊)という本を現在執筆中です(※7月15日発売予定)。

 家出をし、いつでも家を捨てられるだけのプライドを築き上げていければ、今日までの家の中の欺瞞的な関係性が、もっとハッキリ見えてくるはずです。